千葉県公立高等学校事務長会

第4回関東地区特殊学校事務長研究協議会報告



平成16年10月8日(金)茨城県水戸市のホテルレイクビュー水戸において第4回関東地区特殊学校事務長研究協議会が「ユニバーサルデザインを目指した特別支援教育」という大会テーマのもと開催され、第一分科会の「安全管理とバリアフリー」について元千葉盲学校(現桜ヶ丘養護学校)の柄崎事務長が提案を行いました。
ついては、提案内容と意見交換の内容について掲載しますので参考にしていただければ幸です。
なお、この協議会終了後、5の障害種別(盲・聾・肢体不自由・知的・病弱)の事務長会が全て解散し、関東地区特殊教育諸学校事務長会として発足いたしました。

◆ 提案内容

平成13年に文部科学省の「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」が出され、わが国の特殊教育(特別支援教育)が新たな展開を迎えている。一人一人のニーズを把握し必要な支援を行うという考えに基づき、児童生徒の障害の重度・重複化が進む中、学校施設のバリアフリー化、地域の特別支援教育のセンター的機能の充実、障害種別を越えた教育の連携の必要性など基本的な考え方が示されている。その中で今後の特殊教育諸学校の施設設備の在り方について考えてゆきたい。

1 千葉県における特別支援教育の現状について
国立・県立・市立の特殊教育諸学校が35校あり、病種、就学指導等により各盲・聾・養護学校に通学している。児童生徒の重度・重複化とともに、盲・聾・肢体不自由・病弱の養護学校は数が少なく、遠くの学校に通わせなくてはならない状況である。
障害の多様化に伴い、盲・聾・肢体・知的・病弱を包括した「総合養護学校」という学校構想が課題となりつつある。

2 児童生徒の重度・重複化の実態
本年度、千葉県における県立・市立特殊教育諸学校(33校)には4255人の児童生徒が在籍している。その内1094人の重度・重複の児童生徒がおり、1校平均33.2人(約25.9%)となっている。一部の学校においては、通常の2倍にあたる児童生徒数の過密化とともに、60〜70%の重度・重複の児童生徒が在籍する学校もみられる。更に、言語障害や自閉症・情緒障害に加え、体温調節等が困難な障害を併せ持つ重複の児童生徒が多くなる傾向となっている。

3 施設設備の現状
千葉県のほとんどの知的障害養護学校は、養護学校の義務制が施行された昭和54年前後に設立された。その当時は、障害種別に即した施設設備として整備されたが、今日の児童生徒の重度・重複化については十分な対応がなかったと思われる。しかし、今後はこのような児童生徒を念頭において、学校の施設整備について年次計画を立てて整備を図っていく必要がある。

(1)教室の冷房は学部1台の割合で設置しているが、増設してゆく必要がある。

(2)家庭のトイレの洋式化が進み、和式トイレを使用できない児童生徒が増えてきた。
洋式トイレへの改修や車椅子等に対応できるトイレの設置を行っているが、改修するスペースが建物の構造上困難を極めている状況にある。

(3)設置されているエレベーター内のスペースが狭いため、車椅子対応の児童生徒の移動に時間がかかってしまう。また、それぞれの棟にエレベーターが必要となってきている。

(4)大規模改修時に昇降口に自動ドアーが設置されたが、児童一人での利用には注意が必要である。

(5)生徒昇降口、体育館出入口、通路等に手すりを設置したり、スロープに改修し段差を解消している。しかし勾配が急な箇所もあり車椅子での移動が困難な場合がある。


4 医療的ケアーを必要とする児童生徒への対応

(1)資格を持った看護職員を配置し、体温、酸素飽和度、呼吸の状態、全身の状態などのチェックを行う他に、痰の吸引、経管栄養、胃ろう栄養法、導尿、座薬挿入などの医療的ケアーを行っている。

(2)現在は普通教室を改修し環境を整えている。今後、個々の障害特性から生ずる構造上・指導上の違いや安全確保を考慮し、棟や階を分けるといった配慮が必要である。また、転倒時の衝撃を吸収するために、部屋に絨毯を敷くことも必要である。

(3)給食については、衛生面を考慮し、再調理室の確保や食事の摂れる部屋が必要である。
国、各地方自治体の財政は危機的な状態にあり、これに伴う行財政改革が推進されている。厳しい財政の中で施設設備を整備していかなければならないが、既存の施設においては大規模改修、耐震補強、一般整備事業等により、徐々にでも改善してゆく必要がある。また、身近なところ(水道蛇口など)での安全管理にも目を向ける必要がある。


◆ 意見交換・情報交換

情報提供に基づき、「安全管理について」と「バリアフリー」に分けて、各都県の状況や今後の 進むべき方向などについて活発な意見が出された。

1 安全管理について
池田小学校の事件以後、学校で取り組んでいることや不審者侵入対策の訓練など各都県の状況を紹介してもらった。

(1)各県とも事件発生後、緊急通報装置を数箇所設置し、通報訓練を実施している。マニュアルを作成し、不審者対応訓練も行っている。訓練時には警察に立ち会ってもらい、防犯の仕方や護身術の講習(女子職員)を受けたり、避難訓練時の様子をビデオで撮影し、問題点の  確認と指導を受けている県もあった。
常に意識をもち学習してゆくことが大切ではないか、という意見が出された。

(2)門扉は日中閉めておくようになり、来校者名簿を設け名札をつけてもらうなどして来校者の確認をしている。
開かれた地域づくりのため、門扉を開放している県もあった。

(3)特殊学校には希望する台数の防犯カメラを門扉に設置(5台)し、24時間体制でテープが回っている。職員室のモニター画面で職員が監視することになっているが、常に画面を監視することは難しい現状で、監視するものがいないと有効活用ができない。

(4)携帯ブザーを着用するようになった。

(5)公衆電話は非常災害時には優先的に確保される通信回線であるので設置しておきたいが、利用者が少ないため撤去されてしまう。


2 児童生徒の安全管理について

(1)掲示物の画鋲が落ち飲み込んでしまったという事故があり、その後両面テープで対応していたが、掲示物が剥がれてしまうので、元の画鋲使用に戻ってしまった。何かよい方法があればという質問に、大規模改修の際磁気対応のホワイトボードに改修し、画鋲使用はなくなった。(盲2校)との回答。

(2)車椅子対応のスロープ等の非難器具の状況はどのようになっているかの質問に、教室棟の2階から1階へのスロープは設置されていないが、寄宿舎にらせんのスロープ がある。エレベーターは設置されているが、地震、火災時は止まってしまい、いざというときには使用できないため問題である。との回答

(3)年度当初に、車椅子を数人の職員で2階から1階に降ろすという防災訓練を行っている。車椅子の扱いを全職員(行政職も含む)が習得するための訓練を行い、安全の確保に努めている。体の小さな子などはおぶい紐で職員がおぶって非難させている。


3 厨房の衛生管理について

(1)厨房内のドライシステム化がどのように進んでいるかとの質問に、大規模化改修によりドライシステムにしたが、器具更新の予算がなく対応が難しいという問題点が出された。年次計画で、毎年数校ドライ化へ改修している。との回答

(2)複数の食品形態の異なる再調理を、数人の調理員で行っている。


4 バリアフリーについて
重複児童生徒が増え、建物のバリアフリーは、予算の関係で改修が進まない状況ある。各県 の状況はどのようになっているか。

(1) 大規模改修中であるため、校舎面、歩道面はフラットにしたが、グランドは周りの住宅地との関係で少し低くなっている。点字ブロックの設置は、将来の障害種を越えた教育を考慮し、固めのもので車椅子対応ができるようにと考えている。

(2)教室は音声発信装置を設置し、屋上は緑化対策のため芝生にし、エレベーターを設置するトイレはウォシュレット付きにし、床暖房設置(重複学級)、全教室エアコン設置、壁と床を明確に表示するなど随所に工夫した。(盲)

(3)年次計画で車椅子対応に改修、エレベーターを設置し、全教室エアコンを設置。

(4)地域との交流で老人ホームとの交流を行い喜ばれている。学校の活動状況を回覧板によりお知らせしたり、また、地域に施設を開放している。鍵は自動ロック(4ヶ所)で警備会社により遠隔操作ができるようになっている。また、カメラ付きセンサーライトがついている。

(5)障害者に配慮した製品が作られているが、一般家庭ではそういった製品を購入することはまだ少ない。そのため学校で購入してしまうと、社会に出たとき使用できない可能性がある。そのため、物品購入に対しては安易に便利な物品を購入することは考えなければならない。



(注1) 再調理・・・給食などの一次調理品を刻み食やミキサー食にし食べやすくする二次調理のこと。衛生上問題があるため給食を食べる部屋とは別の部屋が原則。

(注2) ドライシステム・・・厨房内の床が水で濡れていると食中毒の原因となる細菌が繁殖しやすいので床に水が流れないようにするシステム。この場合厨房室のみではなく厨房器具もドライ化対応にする必要がある。




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