千葉県公立高等学校事務長会

平成20年度 事務長研修会



  日時:10月29日(水)10:00から
  場所:千葉県教育会館 5階会議室
演題 「[平常時の危機管理]・・・学校を危機の発生から守る」
  講師:パーム コンサルティング グループ
広報・危機管理アドバイザー 伊原正俊氏

研修概要
1 「危機管理」は「管理」ではない。
(1)危機管理には、3つの局面と課題があることを認識しよう。
T 平常時の危機管理(リスクマネジメント)
○ 潜在リスクの掌握と予防策の立案
○ 危機管理の意識と知識の職場内への浸透
U 緊急時の危機管理(クライシスマネジメント)
○ ダメージ・コントロール
○ クライシス・コミュニケーション
V 収束時の危機管理
○ 再発防止策等の確立
○ ダメージの修復策の立案と実施
※危機管理において重要なのは平常時である。
平常時の危機管理、必ず予兆(兆し)がある。(異変センサー)
(2)危機(リスク)を認識し予測する。
○ 組織の常識は社会の非常識。「何か間違っていませんか?」
  椅子から降りよう!(椅子に座ったままでは社会が見えない。)
※「学校の常識は社会の非常識だ。」と思って行動してください。
○ 自校の危機(経験・潜在リスク)……「一度起きたことは、必ず二度起きる」
○ 他校・他者の危機(他山の石)……「明日はわが身」と、教訓に
○ 新聞・テレビ等のマスコミ報道に学ぶ賢さ 
(3) 学校には特有の5つのリスクがある。
 @ 「教室は一人の強者対多数の弱者」である。
 A 学校は、サービス業である。(授業料は前払いである。)
 B PRマンである。(広報マン)
 C 「生徒らの意識の低下」
 D 「出入り自由のキャンパス」

2 コンプライアンス(法令遵守)
「コンプライアンス意識」の徹底が、これからの危機管理の急務の課題である。
※ コンプライアンス意識とは、直面しているその問題について社会の視点・常識から見て(倫理・法律・法令等はもちろんのこと)
「問題にならないだろうか・・・?」
「本当に大丈夫だろうか・・・?」
と首をかしげる意識(疑問を持つこと)である。


※「守ろう。」という意識が重要である。


3 異変センサーを働かせる。
「危機意識の欠落」に問題点がある。
@ 「タイシタコトニナラナイダロウ・・・」⇒とんでもない結末へ!
A 「ナントカナルノデハ・・・」     ⇒なんともならない!
B 「ヨクアルコトサ・・・」       ⇒あってはならない!

4 風通しのよい職場にする。
(1)風通しの良い職場にするには、
上司の役割は、「話し合いができる。」と誰もが感じられる職場にすること。
 (「何でも話せよ。」「いつでも聞くよ。」)
(2)実際は、「上は耳なし、下に口なし」後は「こっそり処理する」しかなくなる。
問題があっても指摘しにくい“職場風土”が危ない。


5 危機管理の基本認識事項
(1)危機管理で重要なのは、知識や制度ではなく、「意識」である。
  「危機管理意識」があって初めて「知識」が生きてくる。
 ※知識や制度は、必要条件に過ぎない。守る「意識」と「心」があって十分条件が整う
(2)「危機管理意識」を高めるにはどうすれば良いのか。
@「ヒヤリ・ハット」を気づく意識の醸成(異変センサーの感度アップ)
A「危機管理意識」とは「ちょっと変だな・・・?」、「これで大丈夫かな・・・?」と思う意識である。
(3)危機管理は、「普段の仕事」である。


6 危機を防止する、職場における「10の行動指針」
@ 「ちょっと変だな!」「大丈夫かな!」という意識を持ち仕事をしているか。
A コンプライアンス(法令遵守)をはみ出した行為をしていないか。
B 「社会的責任」または「道義的責任」からみて、問題はないか。
C 児童・生徒の立場と目線。市民の顔を思い浮かべて行動しているか。
D 職場の“疑義事項”を「三猿主義」でウヤムヤにしていないか。
E 一つのクレームにも、迅速・的確に誠意を持って対応しているか。
F そのことを誰(児童・生徒や保護者・地域住民等)に対しても堂々と説明できるか。
G “敏腕な社会部記者”が知っても問題にならないかを考えよう。
H 「公立学校の常識」ではなく、「社会の常識」で判断しているか。
I 「リスク記事」を教訓としよう。(報道記事は「危機管理の失敗例」の生きた宝庫だ)

7 一人ひとりの危機管理とは何か。(学校の危機管理なのか皆さんの危機管理なのか。)
  「自分と自分の家族の生活を守るため」にある!
  という“当事者意識”を一人ひとりに持たせること。


8 参考
(1)職場を変えよう!
@ 内容:簡単な会議を一月に一回開催する。
A 人数:5人から6人
B 材料:新聞記事ひとつ(不祥事等)
C すること:「何がいけなかったのか。」を話し合う。
D 約束事:一時間話し合う(結論を求めてはいけない。)。
メンバーの意見を否定してはいけない。

(2)個人情報漏洩の原因と、対策における落とし穴
個人情報漏洩はなぜ無くならないのか。
@ ルールを作って安心する。(危機管理意識の徹底)
A 情報は預かっているだけと認識すること。
※ 外注する場合は、必要最小限を渡す。(氏名、郵便番号、住所等)。

9 印象に残った言葉
@ 学校も教育委員会も守るものは、「子どもたちである。」
A 平常時の危機管理は「市民のスタンス」で考える。
B 「何とかなると思ったら、なんともならない。」
C 「問題が発生する以前からすべての危機・リスクはシグナルを鳴らし続けている。組織の中にそのシグナルに気づいている人が一人くらいいるはずだ。」警戒信号(シグナル)を調べて、対処すればすべての危機は回避できる。
D 「人は起こしたことで非難されるのではない、起こしたことにどう対応したか。その対応がかなっていたか否か。」で非難される。
E 「組織の中に間違いに気づいている職員がひとり位いるが、その意見がいえない。」そういうのを「風通しの悪い職場」という。



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