千葉県公立高等学校事務長会

20年度 研究協議会並びに総会



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H20.5.2実施

◆ 講演 -国の教育施策-  〜その動向について〜

講演 -国の教育施策-  〜その動向について〜 榎本次長講演のつづきです。

● 千葉県教育委員会教育次長  榎本 剛

・国の教育振興基本計画については、根っこが新しくなった教育基本法にあり、その中で国が教育基本計画を作るという文言があります。それを受けて各地方公共団体も国の計画を参酌しながら各自治体で基本的な計画を定めるように務めるという文言があります。千葉県の場合には去年から4つの柱で構成された戦略ビジョンがあります。

・アクションプランを県で作る中で、具体的な事業を実施していくと、ビジョンとアクションプランという二段構造になっています。
・国全体として大きな計画をつくり教育を進めていこうという中で、千葉県としては少し先を進んで始めたが、具体的な話はこれからも変わってきます。去年のいわゆる教育三法の改正の中で、教育委員会制度の改革というのも大きなテーマでした。小泉政権の最後の頃は、教育委員会については廃止すべきだという議論が相当強くあったが、安倍政権になってそういう動きは消えて、むしろ教育委員会にしっかりやって貰うことが大事だというように流れが変わった。ただし、教育委員会制度はこれからもずっと安泰であるということではありません。教育委員会はいらないというふうに言う人は今でも沢山います。そうすると、今の枠組みのなかで教育委員会がしっかりと地域の教育を支えているんだという仕掛けをちゃんと維持していかないと、やはり教育委員会はいらないという議論は、今後いくらでも起こるだろうと思います。

・教育委員会評価というのは教育庁全体の評価です。これと学校評価とは連動してきます。学校評価は今年度から事実上義務化されました。昨年までは努力義務と言って学校評価をするように務めなくていけないという規定だったのが、しなくてはいけないというようになった。文科省で、学校評価のガイドラインを改訂して、高校も特別支援学校も両方とも国の学校評価のガイドラインを参考にしながら、それぞれやらなくてはいけないということになっています。ただし、ガイドラインは具体的にどうするのかというのは学校任せになっているところです。・学校評価を考える際に県全体として考えているのが、開かれた学校作り委員会と連動させていこうということです。学校は閉じた存在ではなくて、地域に社会に開かれていかなければならないということです。ミニ集会とか学校評議委員とかある訳ですが、もう少し見えるような形で、学校と外との繋がりを構築していかなければ学校も生き残れないと将来的な危機感があります。学校がこれからも単体で生き延びていけるのかということを考えていくと、規制改革のなかで避けては通れない道です。そこで、県としては開かれた学校作り委員会を、統一した名称として設置する事として、そのやり方については今年検討していこうとしています。

・開かれた学校作り委員会と学校評価もそれと一緒にやってしまった方が効率的であろうということで、学校評価と開かれた学校作り委員会を一体として考えていこうというのを、今年のテーマとしているところです。今年、試行的な取り組みをして、暫時県全体での形としていければいいと思っています。県立学校はこういった開かれた学校作り委員会で進めていって、小・中学校はそれとは少し違った、地域と共に進む学校作りというアプローチを取ることにしています。
・小中学校はこの3月には新しい指導要領が出たところですし、高等学校もこの9月には新しい指導要領が告示されると聞いている。教育課程については小・中学校ですと利用時間数を増やすとか、小学校から外国語を始めるとか、伝統や文化への理解とかがある。国の方の教育課程の見直しが、法令によるものとして、それを県の中でどういうふうに咀嚼、アレンジしていくかが大事になっています。そこで、県の話も義務の話が多いんですけれども、指導要領をもう少し県レベルでかみ砕いたものをつくろうと今年からやります。

・小・中学校の全国学力テストを分析をして、その結果を学校に伝えていくことですが、千葉県の場合は東京大学の教育学部と一緒になって全国学力テストの分析をしています。いずれ近いうちに結果が発表できるというふうに思いますが、これは他県に全く例のない取り組みです。他の県は、全国学力テストを自分の県の中で委員会をつくって公表するんですけども、千葉県は客観的な分析は大学にやってもらって、県としてどういう風なことをするかということとセットで発表しようということで、今準備をしているところです。
・これも小・中学校の話が中心になりますが、伝統や文化という事とも関連しますが、千葉学というのをきちんと確立していこうと、「千葉ふるさとの学びテキスト」を今年つくっていこうと進めているところです。国の動きを踏まえながら、県としての内容の明確化、あるいはアレンジをやっていくということにしています。
・教育内容と学校、家庭、地域というのは別々なようでいて非常に繋がっているが、大体どこの国も教育内容をいかに21世紀にふさわしいものに変えていくかが大事なんだと言っている。アメリカ人はこれからは知識偏重ではなくて、考える力を身につけさせるべきだと言っている。その為には教員の資質を向上させていく必要があると言っているが、素晴らしいカリキュラムをつくって、素晴らしい先生がそれを教えれば問題はないだろうが、基本的に学校があって、先生があって、今この環境をベースにしてどうしたらよくなるかということを考える必要があると思います。
・もちろん教育改革は進めていく事が大事ですけど、学校・家庭・地域の話というのは改革を進めていく際に、学校だけで考えるのではなくて、地域の力、家庭の力を組織的に使っていこうとしていかないと、学校が全部抱えて学校が全部処理していくという時代ではないだろうという観点で、地域と共に歩む学校作りというのを出来るだけ早い内に、各学校に地域と組織的な繋がりを作っていくということを進めていきたい思っています。これも今年どこまで進められるかというのが、県教育委員会の最大のテーマの1つですので、しっかりやっていきたいと思っています。
・この話は、家庭教育支援にも繋がって参りますので、中学校段階までに、家庭にどこまで具体的に支援、援助が行政として出来るかということが問われていますので、しっかりやって行かなければならないと思っています。

・学校選択制は、小・中学校ではこれから大きなテーマということになってきます。学校選択制は、その通学区域の学校に通うと言うことではなくて、親が通わせたい学校を選ぶという話です。学校を親に、あるいは子供に選ばせろという動きは、非常に強くなっているところです。
私も国の学校選択制をやるべきだという人達に対する、公開ヒアリングに出ていたものなんですけれども、基本的に小・中学校をどこの学校に行きたいかは親や子供が選べばいいのであって、行政が決めるのはおかしいんだということをいう人がいる。それに対して、通学区域をどうするか、それは市町村が決めればいいのであって、国が一律通学区域は撤廃しろみたいなことをいうのは、それはおかしいということを文科省や県の教育委員会は常に言う訳です。市町村の方でうちの市はもう通学区域は止めて自由に選ばせますというのであればそれはいいけれども、国が通学区域撤廃とかという事を言うのは、それは地方分権とは全く反対なので、地方分権に逆行すると抵抗する訳です。そこでそういう議論がたくさんある中で、必ず妥協が生まれる訳です。妥協とはどういう事かというと、学校選択制は全面的には導入しないにしても、いまの仕組みの中で保護者が小・中学校を選ぶ権利は少しはあるんですよと、それをもっと明らかにしましょうということを、通知で書くということで、文科省とそれから規制改革側とで妥協して、こういう文章が生まれてきたりする訳です。
・いまの仕組みでも、通学区域ではない学校に行かせたいと、越境入学といまでも制度的に認められています。部活の事情とか、いじめにあってとか、そういう特別な事情があればいまでも通学区域は小・中学校でも変えられる訳であり、そういう変えられる仕組みがあるんだよということを、ちゃんと知らせるということで、保護者の権利を最低限保証しようじゃないかと。ただし、全面的に学校選択制にまで発展させるかどうかは、それは各市町村で考えれば良いでしょうということで妥協している訳です。
・市町村の教育長さん方にこういう話をしたら、手が挙がって、通学区域をどうするかなんてのは、別に国に言われる話ではないのだと言うふうにおっしゃられた教育長がいらして、やはりそうなんだなというふうに思ったところですけれども、この辺はこれから小・中学校ではさらに議論はどっちの方向に進むかということが、焦点になってまいります。こういう制度をしっかりと実施することで、うちの子供も事情があれば通学区域じゃないところにも行けるんだという制度が定着すれば、学校選択制の議論もそれほど深くは伸展しないかもしれませんが、その辺が市町村でも曖昧な運用になってしまうと、これはやはり駄目ではないでしょうか。だから、学校選択制を徹底的に導入すれば良いのではないかという議論が、またこれから出てきかねないので、こういった制度の運用をちゃんとしなければ行けませんよと言う話を市町村の方々によくしています。

・学校健康教育についてですが、実はこの法律が変わることになっています。学校保険法という法律がありますが、これは来年からは学校保険安全法という法律に変わるそうです。また、学校給食法についても色々なことが書いてあります。学校保健、安全給食、それぞれに関して、国で色々な指針を作るということが法律に書かれるそうです。
・県では学校保健課を学校安全保険課に変えましたし、少しそこから発展しますけれども、危機管理の担当参事も置きました。こういった分野に関して学校の子供達の健康や安全に関しては、今年も体勢をつくってやっていくということにしています。
教職員に関しても、昨年の教育三法の中で新しい職を置くということで、副校長と主幹教諭と指導教諭というのが、法律上は書かれたところです。ただし、県においては副校長を一部の県立学校で本年度から置いたところです。主幹教諭や指導教諭をどういうふうにこれから考えていくかということが、今年のテーマになっています。また、市町村立学校にはまだ副校長というものを置いていませんから、市町村と相談しながら新しい職の事も考えなければいけないということにしています。
・給与については、これが今年のたぶん年末に向けてのテーマになってきます。教職調整額の見直しというのが今年は相当進むようです。40年ぶりくらいに教員の勤務実態調査をやったら、40年前よりも教員の残業時間が大変増えていました。その40年前の水準で算定された教職調整額のままで良いのかという議論があった訳ですけれども、ここは増やせという議論と、いやむしろ減らせという議論と両方あって、決定が先延ばしということになっていますので、これは今年また新聞紙上でいっぱい出てくるであろうと思います。どういう結論になるかは、全く決まっていません。教員の多忙かという事をふまえてどうするかという、その教育の側からの議論がある一方で、いや歳出削減をどうするんだという、外からの圧力があって、両者の押し合いへし合いがある中で今後決まってくる話であります。
・教員の免許更新制ですけども、来年の4月から実施しなければいけないということですので、これは法律で免許を更新するとなっている以上はミスは許されないので、来年度からの実施に向けて準備を始めているところです。県の中に"免許室"という専用の室を作って、担当の職員の方々が県内の大学と連絡を取りながら準備を始めているところです。県内ですと千葉大学もありますが、それ以外に私学においても、今年から施行の講習を始めることにしていますので、来年から遺漏がないようにしなければいけないが、千葉県だけで教員が約4万人ですから、4万人の方々を10年で免許更新されるということは、単純に割り算して年間に4000人くらい免許更新を受けなくてはいけないということで、大変なマンパワーが必要になる訳ですが、そこはしっかりやるしかないというところです。

・県費負担教職員制度はこれは専ら義務の話であります。市町村立学校の話ですが昔からの大テーマでありまして、教員の人事権を県がもつか市がもつかと。それから給与は県が払うべきか市町村が払うべきかという、長年のテーマでありますがそろそろ決着を付けろということになっていますので、今年以降、また議論になって来るはずです。県の方では去年の10月くらいに人事異動方針があって、そこで市町村立学校の先生方の人事に関しては、基本的に市町村の内申を尊重しますと明記したところですので、基本的に市町村のあり方を尊重していくという流れはある訳です。後は法律レベルにおいて、人事権、あるいは給与負担をどうするかということが今年、また改めて問われてまいります。
・学校事務の削減ということが出て参りまして、これはもともとさっきの教員の多忙かという話があるなかで、教員が忙しくなっているのをどうしようかと、先生を増やせれば解決出来るのかもしれないけれど、文科省が先生を増やすということになかなか成功していないという状態があります。地方公務員の中には本当に教育関係の人が非常に多いと。これは教員も我々事務系もみんな含めてですけども、都道府県の職員の6割近く、市町村の職員の1割以上が教育関係です。したがって、教員を増やそうとすると、この自治体の財政難、定数削減の中でどうやって増やすんだという話になってきます。この辺も、歳出削減の壁にいつもぶつかっているということです。人がなかなか増やせないということになってくると、そもそも仕事を減らしましょうというところになってきます。教員の事務の削減ついては、今年どういうふうに考えていくかということはテーマとして議論しなければいけないことになっています。これも、何年かに一度必ず事務の削減を見直しましょうとテーマになる訳ですが、今回は本当に真面目にやらないと、国や県から、あるいは小・中学校であれば市町村からの文書が出てくると、あるいはいろいろな団体からの文書が来るという中で、放っておく訳にいかないだろうということで考えたいと思っています。
・最後のこの学校事務という観点でありますけども、これから大きなテーマになってまいります。私自身は文科省の中では義務と高校といろいろな学校事務の方がいますが、文科省の中で学校事務のことを真面目に考えている人は、私の他に多分いないと思いますが、何とか学校の事務の方々のあり方に上手く光を当てられないかなということはいつも思っていまして、学校事務のあり方を考えようということを定義してきたところです。

・このまま行くと学校の職員は減らされる一方になります。国の流れもあれば、県の独自の施策もあれば、いろいろな流れがあるでしょうけれども、放っておくと本当に減っていきます。自分たちの必要性、存在意義、存在価値というのは、自ら明らかにしていくしかないと、それはその団体として頑張ろうとかいうではなくて、学校における事務とは何かと、その為にどういう働きが出来るかということを、論理的に議論する環境を作っていきたいと思っています。それがないと、財政難なんだから減らすしか無いんだと、あるいはこれからは地方分権なんだから、色んな学校の職員の人数も別に国の法律とか規準を関係なくやればいいんだという流れが来てしまいます。なんとか県立学校の事務の仕事のあり方、いまがどうなっているのか、今後どうあるべきなのかということについては、更に今年一生懸命考えて行きたいと思っているところです。
そういった観点から、また今年度も事務長会の皆さんには、ご協力をお願いしたいと思うところが多々ありますので、宜しくお願いいたします
冒頭申し上げましたが、学校を取り巻く環境は日々厳しくなっております。なかなか明るい感じにはならない訳です。どこの学校に行っても先生方は一生懸命頑張っていますし、それに教職員の方々全体として、学校を一生懸命やっているというのは常に私も見ているところですし、話も伺っているところであります。是非今年度も先生方や、それから教職員全体の皆さんが、元気に学校を明るく出来るような環境を教育委員会としても作っていきたいと思いますし、まずは各学校においてそれぞれの学校作りをどういうふうにしていくのかということが、大きく問われております。

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