千葉県公立高等学校事務長会

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平成19年5月8日(火)

◆ 管理職の心構えについて

千葉県職員能力開発センター所長
古市 雅雄 氏


1 管理職とは
(1)リーダーの要件(P・F・ドラッカー「プロフェッショナルの条件」仕事としてのリーダーシップ)
@効果的なリーダーシップの基礎は、組織の使命を考え抜きそれを目に見える形で明確に定義し、確立すること。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を決め、それを維持する者。

Aリーダーシップを、地位や特権ではなく、責任と見ること。
優れたリーダーは、失敗を人のせいにしない。真のリーダーは、自らが最終的に責任を負うべきことを知っている。

B信頼が得られること。信頼が得られないかぎり、従う者はいない。信頼するということは、リーダーの言うことが真意であると確信をもてることである。それは、真摯さに対する確信である。

(2)マネジメントが果たすべき役割(P・F・ドラッカー「チェンジ・リーダーの条件」マネジメントの課題)
@組織に特有の使命すなわち目的を果たすこと。
A組織に関わりがある人たちが生産的な仕事を通じて生き生きと働けるようにすること。
B自らの組織が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会に貢献すること。

(3)目標と自己管理によるマネジメント(Management by Objectives and Self−Control)
マネジメントサイクル
      Plan (企画立案) → Do (実 施)
          ↑          ↓
      Action(改 善) ← Check(評 価)

上 司  @方針の明示   C権限委譲指導助言 G上司評価  I評価を踏まえた支援
部 下  A目標案作り   D自由裁量による実行  F自己評価  J修正実行
対 話  B合意による決定 E面接・指導助言 H合意による評価決定  K能力開発目標設定

「目標と自己管理によるマネジメント」の特徴
@自己管理(部下に、自らやろうという気持ちにさせる→自主性・創造性・チャレンジ重視)
A成果重視(与えられた仕事の組織業績向上への貢献度を重視し、これに評価の重点を置く)
B組織目標と個人目標の統合(組織目標に基づく方針の明示→合意による決定←目標案作り)
Cコミュニケーション重視(コミュニケーション→納得性・信頼性を高め、目標・達成基準を明確化)
D能力開発の促進と行動変革
※「あすのちばを拓く10のちから」を推進するための県行政の進め方:2 マネジメントサイクルの徹底

2 学校のリスクマネジメント
  (2)を除き、職員能力開発センター・リスクマネジメント研修越智訓男講師)
(1)危機管理とリスクマネジメント
危機管理:不測の出来事が引き起こす危機や破局に対処する政策・体制。経済危機や平和の危機、テロやハイジャック、大規模地震など  の自然災害に際して行われる。(広辞苑)
リスクマネジメント:企業活動に伴う様々な危険を最小限に抑える管理運営方法。(広辞苑)
危機管理は、「危機の予知・予測(情報システム)、危機の予防・回避・事前の諸準備、危機対応(被害局限措置)、危機再発防止という4段階のノウハウ」
危機管理に必要なことは、「知識」の涵養ではなく、危機管理「意識」

(2)学校のさまざまなリスク(木岡一明「学校の危機管理とセーフティネット」)
・金銭・秘密漏洩・セクシャルハラスメント等教職員による信用失墜行為・問題行動等のリスク
・教育活動中の事故や、登下校時における事件・事故(不審者の侵入を含む)のリスク
・いじめや不登校といった生徒の精神・生活状態に関わるリスク
・食中毒、インフルエンザ、SARS等、健康や衛生面のリスク
・地震・風水害・火災等の災害リスク
・リスク発生時の報道・マスコミ対応リスク

(3)リスクマネジメントの手順
@リスクの発見:業務の流れを洗ってみる。不祥事が発生する体制(システム)がないか確認。
Aリスクと発生する損害の測定:頻度・人的損害・物的損害・組織の損害(信頼の喪失)
B危機管理処理対策:危機発生の予防と軽減・危機処理手段の決定・危機管理計画
C危機発生時の対応:事実内容確認・現場対応・関係先連絡・緊急事態方針決定・報道機関対応・ 緊急事態原因安全対策 調査・職員説 明・地域住民関係先説明・記者発表
Dリスクマネジメントの事後対策:原因究明再発防止対策・危機管理対策の評価等

(4)危機を回避するための行動指針
@いつも「誰かが見ている」、「誰かに見られている」という気持ちで仕事をする。
A「ちょっと変だな…?」、「本当に大丈夫かな…?」という意識を持って仕事をする。
B客のクレームは神の言葉。
C自分の妻や子供にそれを勧めることができるか、を自問してみる。
D「おかしいと思ったこと」は「おかしい」と上司に問いかける。(負の情報を受ける・上げる勇気を持つ)
E「前からやっている」、「ヨソでもやっている」という判断はやめる。

(5)危機防止のための幹部の心得
@リスクを招いた部下を“その場”で叱るな!
A不祥事を間違った考えから隠蔽するな!
B悪い情報は“2時間以内に”トップに速報せよ
C関係部局への第一報を心がけよ
D問題を一歩、自分のポストを離れて見直してみよ!
E法的に問題はなくても、社会的、道義的責任からも考えよ 
Fマスコミに暴かれる前に記者発表せよ!

3 公務員倫理と服務
(1)公務員倫理(原田三郎「新・公務員倫理」)
公務員の行動規範。公務員として、社会一般に受け入れられ、期待されている行動原理。知識が日常の行動に反映して初めて、公務員倫 理の理解となる。行政・公務への信頼の前提。
「ドントアプローチ(してはならないことをしないこと、しなければならないことをすること)」から、
「ドゥ・アプローチ(した方が良いことをすること、しない方が良いことはしないこと)」へ!

(2)服務と懲戒(地方公務員法)
服務規定:30条(服務の根本基準一全体の奉仕者)、32条(法令等及び上司の職務命令に従う義務)、33条(信用失墜行為 の禁止)、 34条(秘密を守る義務)、35条(職務に専念する義務)、36条(政治的行為の制限)、37条(争議行為等の禁止)、38条(営利企業等の従事制限)等  懲戒(29条):懲戒処分の種類:免職・停職・減給・戒告。懲戒事由:@地公法等違反。A職務義務違反・職務懈怠。B全体の奉仕者にふさわしくない非行。

(3)刑法:窃盗・詐欺・業務上横領(懲役10年以下)、横領(懲役5年以下)

4 公務員倫理と服務(続き)+学校における金銭管理の問題
(1)「地方公共団体等における汚職事件に関する調」(平成15年度。総務省公務員課)
汚職事件の種類別内訳:横領90件、収賄30件、詐欺10件、背任2件、公文書偽造1件、その他3件、計136件
汚職事件の態様別内訳:その他公金取扱81件、土木建築工事の執行24件、物品等購入役務提供9件、補助金融資5件、税賦課徴収5件、用地買収3件、その他9件、計136件
刑事上の措置:送検12人、起訴26人、判決言渡等53人(懲役50人、禁固1人、罰金2人)、計91人
行政上の措置:懲戒処分146人(免職117人、停職18人、減給10人、戒告1人)、訓告等10人、計156人
事件発生の背景:(複数回答団体あり)

@組織・制度上の問題249件:監督不十分100件(上司の指導監督認識不足・繁忙による監督不十分)、特定職員への権限 集中57件、
制度運用上の問題50件(事務執行体制不備)、人事の停滞42件

A職務遂行上の問題255件:業務チェック不備142件(信頼感から実質的チェックせず・監督検査の形骸化
 ・担当者が単独で事務・新事 務のチェックシステム機能不全)、会計管理不備77件(関係帳簿整備等事務処理ずさん・現金受理経理処理ずさん)、公印等管理不備36件

B職員の資質の問題238件:職員としての資質欠如206件(公務員倫理欠如・公金自覚不足・金銭ルーズ・私生活問題・独善)、業者との癒着32件

C外的要因による問題17件:社会的要因9件、業者の競争8件

Dその他52件:研修不足・職員間意思疎通欠如等
 職発覚地方公共団体等(110団体)の再発防止対策(複数回答):
 法令規程整備53団体:契約入札等規程整備19、組織機構職制整備18、服務規程整備16
 人員配置任用上の改善52団体:人事刷新36、要員充実9、許認可関係職員等の計画的配転7
 事務執行方法改善176団体:チェックシステム整備強化70、事務点検調査実施64、日常執務改善42
 服務管理整備強化179団体:通達の発出68、訓示66、相互注意の喚起45

(2)学校財務の監査システム チェックポイント抄(木岡一明「学校の危機管理とセーフティネット」)
<予算の管理、教育活動に必要となる管理>
@会計に係る諸帳票、領収書の管理、通帳の点検、印鑑管理等について、きちんと取り決め、複数のチェックが入るようになっているか

<私費会計・準公金会計の管理>
@PTA会計に関して会計および会計監査の組織が適正に機能しているか

Aイベントによっては、学校の規模によってかなりの高額の支出入が予想されるものもある(記念式典事業のようなもの)。その場合、委員会(記念式典事業委員会)を設け、会計と会計監査をたてるなどし、公正性と透明性につとめているか

B準公金会計(共済掛金等の法定徴収金や給食会計等)、学校徴収金(修学旅行費、校外活動費、学用品、クラブ活動費、卒業アルバム費、生徒会費等)、各種積立金等の管理についても、複数のチェックが入っているか

5 再び、管理職とは
(1)事務長の在り方(小島弘道編著「事務主任・事務長の職務とリーダーシップ」執筆者黒木明)
@信頼を得ること:信頼を得る第一歩は仕事に精通すること。仕事以外では、人間性の発揮。相互理解に立った納得が不断に得られる配慮が信頼を確保する。信頼関係は、部内、校内の他、教育委員会等関係機関やPTA等の周辺組織との間にも保っていかなければならない。

Aリーダーシップ:事務長に求められる役割の一つに組織の円滑な運営の確保と改善を進めるためのリーダーシップがある。リーダーシップを発揮するためには、当然のことながら、自らの目標をしっかりととらえておかなければならない。リーダーシップとは、その目標を達成するために他の人の協力を得るテクニックであるから、周囲の条件(人・物・金・その他)の整備を行い、ヒューマン・リレーションの考え方を尊重する。目標の意義とその徹底などをあげることができよう。方法としては、命令・指示等より、指導、助言、連絡、調整、情報の提供を求めるなど、相手方の自主性を尊重するのが望ましい方法であろうと思われる。

B常に改善を視野に入れておくこと:改善といっても、日々学校は運営されており、事務はつつがなく執行されている。慣れの中に埋没してしまわないためにも、意識して改善に取り組む姿勢を持たなければなるまい。まず前例踏襲のやり方を見直すことから始めたい。自分の目で見て判断することである。判断の結果従前からのやり方が良ければそれでよいので、やり方を変えることが改善なのではないのである。
改善は独断による押し付けではなく、精選された情報によりどころを求めたい。それをもとに改善に対するリーダーシップ(共通理解、モラールの維持・向上等)を発揮するようにしたい。
なお、校内における監査的役割も事務の分担の中に加え、事務長に主任的役割を期待したい。

C情報を大切にすること:事務は情報の処理ともいわれ、とかく多くなりがちな事後処理事務よりはこれからは企画的事務を重視する方向で進めたい。先を見る事務では欠かすことのできない重要な役割を果たすのが情報である。事務長の情報選別能力と情報加工能力の増進が当面の課題であろうと思う。それを校内で活かす手立てとしては、計画(PLAN)の持つ重要性を学校運営の各所に浸透定着させていくことがその第一歩となろう。

6 学習のすすめ
(1)職員能力開発の基本的な考え方(抄)
@千葉県では、職員一人ひとりを「無限の可能性を持ったかけがえのない財産」として大切にし、それぞれの職員がその能力や特長を最大限発揮して県民満足の向上に貢献できる「人財」となるよう、様々な施策を通じて職員の能力開発を支援する。

A職員能力開発の基本は、職員自身がその能力を向上させようと努めることにある。そのため、能力開発の中心を「自主的学習」と「職場における学習」に置き、「職場を離れた学習(研修)」がこれらを推進支援する。

(2)職員能力開発センター・パワーアップ研修(希望型・全4コース31課程)の例
@リスクマネジメント研修 Aコーチングの基礎研修 Bファシリテーションによるリーダーシップ研修 Cプロジェクトマネジメントの基本研修 Dワークショップの進め方研修 E交渉・折衝の進め方研修 Fクレーム対応能力向上研修 Gアサーション(自己表現)能力向上研修 H自治体におけるマーケテイングの基礎研修 I情報活用力強化研修 J創造性開発研修


◆ 記念講演

「教育をめぐる諸課題について」 -国及び千葉県の動向- 
教育次長 大路 正浩 氏


「ゆとり」も「生きる力」も大事という方向で学力問題に取り組む。知識や技能を詰め込むものではなく、基本的な知識や技能をしっかり身につけさせ、それを活用しながら、自ら学び、自ら考える力などの「生きる力」をはぐくむという現在の学習指導要領の理念や目標に誤りは無いと考えている。「生きる力」の育成が、学力重視の方針としてとるべきことと、力強くお話しされ以下の項目について講義を頂いた。(紙面の関係で内容は省かせて頂きました)

1 学力問題
 ・ 国際学力比較調査結果を受けて
 ・ 「ゆとり教育」か「学力」かの議論について
 ・ どのような学力をつけるのか?(内容面の問題)
 ・ どのように学力をつけるのか?(方法論の問題)

2 教育委員会、学校の改革
 ・ 基本的考え方と留意点
 ・ 教育委員会制度の在り方
 ・ 学校評価
 ・ 教職員の人事評価
 ・ 開かれた学校

3 特色ある高等学校づくり
 ・ 基本的考え方
 ・ 高校再編と、魅力ある高等学校づくりへの支援
 ・ 進学指導重点校、自己啓発指導重点校
 ・ 国レベルの指定事業の状況  
 ・ 高大連携など


◆ 総  会

平成17年5月11(水)「ポートプラザちば」において、千葉県教育庁教育次長 大路 正浩 氏、県高等学校長協会会長 寺田 信彦校長、盲・聾・養護学校長会副会長 林 史恵校長の皆様に来賓として出席していただき、平成17年度県公立学校事務長会研究協議会並びに総会が開催されました。
議事として、平成16年度事業報告及び決算報告、監査報告、平成17年度事業計画案及び予算案、役員改選案が提出され、原案どおり可決されました。


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